注:原作現在進行形ネタバレに関する妄想のため、コミック発売待ちの方は注意してください
初恋から愛を知る
「オレと一緒に来い、サクラ」
砂埃と木の葉が二人だけの空間を守るように渦巻く中、サスケを見つめるサクラが驚きに瞳を見開く。
「お前が必要だ」
言ってサスケは静かにサクラに歩み寄っていく。
サクラの瞳は徐々に伏せられ、俯いたまま動こうとしない。
無抵抗に佇むサクラに、サスケは息のかかる距離まで近づくと静かに言う。
「オレはお前を……殺したくはない」
本心なのだろう。サスケは誰にも語ることのできない辛い気持ちを押さえ込み、ぐっと瞼を閉じる。
近くに感じるサスケの気配に、サクラは顔を上げた。
あんなにも求めていた人が、こんなにも傍にいる。
血の滲むほど強く握っていたサクラの拳は、自然と少しずつ解かれていった。
「ありがとう」
あの時と同じ言葉をサスケに返した。
風に乗ってサスケの匂いがした。少し血の匂いも混じっていたが、あの時と同じ匂いだった。
胸が締め付けられそうになるのをぐっと堪え、サクラは続ける。
「私はサスケ君が好き。昔も今も、それだけは変わってない」
「……頼むサクラ。これが最後だ」
「おかしいね。昔の私だったら泣きながらあなたの胸に飛びついていたのに」
いつだってあなたには、こうやって私のとびきりの、一番綺麗な笑顔を向けていた。振り向いて欲しくて、私を見て欲しくて。
でもね、それは間違った方法だったのよ、サスケ君。
好きよ。
これからもずっと、大好き。
「サクラ」
「そういうの、今じゃムカついて仕方ない!
私はもう、昔の私じゃないのよ!」
サクラが地に向かい拳を叩き込むと、二人の足元がガラガラと音を立てながら陥没していく。
それと同時に二人は間を取るように後方に飛ぶ。
「サクラちゃん!!」
術の外で額に汗を滲ませながら事の成り行きを見守っていたナルトがサクラの元へ駆け出す。
「ずるいよサスケ君。男は男らしく、女は女らしくなくちゃ。そうでしょ?」
「お前、いい女になったな」
「おかげさまで。お世辞は嬉しいけど、手加減はしないから。里を潰すなんて、半殺しにしてでも止めさせる」
「……そうか」
あの頃に戻りたい。
あなたを兄弟と呼び、身体も心もボロボロになりながら、それでもあたなを求め続けているナルトを、ずっと見てきたから。
自らの中に最凶を抱え命を削るようにして強くなっていったナルトに、約束を今でも必死に守ろうとしてくれるナルトに。
恥じないくらいの背中を見せていたいから。
今のナルトに対する想いを、いつか打ち明けても許されるように。
私が出来ることは全てやってみせる。
――私は、彼のためにあなたを連れ去るわ、サスケ君。