注:某シーンその後を補完
君を好きなことに変わりない毎日
「もう遅いから休んだ方がいいってば。サクラちゃん」
治療を終え病室で休むナルトが、サクラを気遣うように声をかけた。
任務の報告後も休みなく自分の治療をしてくれるサクラの姿に嬉しさがこみ上げたが、こうも世話になってしまうと流石に申し訳ない気持ちにもなる。
「そうね。アンタがもう無茶しないなら、帰ってあげる」
「大丈夫だってば! サクラちゃんが居てくれれば――」
「またそうなる! さっきも言ったじゃない! 術じゃ完璧には治せないって! 同じこと何度も言わせないの!」
「うん……でも、ごめんサクラちゃん。それはできないってばよ……」
「……どうして?」
サクラの悲しそうな表情に、胸の奥が詰まる息苦しさを覚えた。ナルトはその痛みも傷の所為にして続ける。
「無茶しねぇのって、オレらしくねーじゃん? いつでも全力だってばよ!」
力をこめて答えると体に少し痛みが走った。しかしそれを堪えてサクラに笑顔を見せると、サクラは呆れつつも笑顔を返してくれた。
サクラが笑うと、これまでの痛みも辛さも、全てが吹き飛ぶ。今だけではない。ナルトは3年経って成長したサクラの医療忍術だけでなく、ずっと以前から何度もその存在だけで救われてきた。
「わかったわ。アンタに無茶するなって方が無茶だった。ま、何があっても、私が何度でも助けてみせるしね」
そういってウインクするサクラは、自分が出会った頃よりもずっと魅力的だった。
サスケが好きで、一生懸命認められようと努力していたサクラに自分は惹かれたんだと思っていたが、それは少し違うような気がしてきた。
「サクラちゃん、なんつーか……すげー強くなった」
「それ女の子に言うセリフ? ま、私は嬉しいけど。ありがと、ナルト」
女の子に……そういえば、エロ仙人に言われたっけ。
女の子には――
「それから、すげー綺麗になった……色っぽくてドキドキするよ」
ってな感じで言うと、オイシイ思いが出来ることがあるって。
ナルトは自来也に言われたとおり、精一杯優しく、甘い声でサクラの目を見て伝えた。
「っ……!?」
サクラは驚いたように目を開き、何度か瞬きした。その頬が赤く染まっていたから、成功したと思いナルトは自来也に心から感謝した。しかし、改めて師匠に尊敬の念を抱いたのは、ほんの一瞬だった。
「……あ。さては。自来也様に余計なことまで教わったわね。このエロ忍者」
オイシイどころか、デコぴんという攻撃を受けた。
「いてっ。ちっくしょーエロ仙人の奴、だから小説も面白くねぇんだってば……」
「小説? 小説ってアンタまさか、あの小説読んだの? あれって18禁だって聞いてたけど」
「読まされたんだよ無理やり。感想言えってしつこくてさ。オレにはどこが面白いのかさっぱりだったけどな」
「そ、そうなんだ……」
「また顔赤くなってっけど、大丈夫?」
「え!? そう!? 疲れてるのかも、じゃ、帰るね!」
サクラは逃げるようにナルトからは離れ、病室のドアを開けた。
「ナルト」
「ん?」
「……一人で、寂しくない?」
「やっぱ今日のサクラちゃん変だってばよ。オレは家に帰ったって同じだからへーきだって」
寂しいと思う時はある。それは決まってサスケのことを考える時だ。それはサクラも同じだろうとナルトは思う。
「――それにさ、オレより寂しい思いをしてんのは、サクラちゃんの方だろ? サスケが、いないから……」
時折思い出して、一人で泣いていることくらい、予想はつく。
泣き虫なのを、知っているから。
サスケのことが大好きなのを、知っているから。
「……ナルト。私ね、ナルトが修業に出たとき、今よりもっと寂しかったのよ。自分でも意外なくらい、アンタが近くにいないことが、寂しかった」
「サクラちゃん……?」
「おやすみ」
ナルトが思ったことを口にする前に、サクラは出て行ってしまった。
――オレがいなかったことが寂しいって、それってどういうこと?
「はぁー、オレじゃねぇってわかってんだけどなぁー、やっぱ好きなんだよなぁー……」
こうやってサクラが優しくしてくれたり、昔より自分を見てくれてることを実感すると、ギリギリの所で押し殺している感情が溢れ出しそうになる。
「でも」
あの子が、目を輝かせて幸せそうに笑う顔が見たいから。
「サスケを取り戻すって約束だけは、絶対、守る」
ナルトはそう呟くと、誰もいない病室で左手の拳に力を込めた。